住宅には様々な種類の扉があります。まず住宅の顔と呼べる玄関口、この場所を形づくるメインパーツとなるのが玄関ドアです。住人も客人も来訪者も、住宅を訪れる人全員に関係するのがこの扉です。家の中に入ると、室内の各室、寝室から洗面所、トイレまで、間仕切りで仕切られた全ての部屋にほぼ必ず扉が付いています。人が通るたび、一日に何度も開け閉めするので、扉一枚一枚の使い勝手が日常の中での暮らしやすさに大きく影響します。
季節や部屋の用途によっては、開け放した状態で使いたいこともあるので、その扉を使うシチュエーションをよく考えなければいけません。また、クローゼットや押入れ、戸棚など収納スペースにも扉が設置されています。ご自身の状況や目的に合ったドアを選んで、より快適な生活を送るために、ドアの種類や選び方のポイントを解説します。
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主要な6種類の扉 開き方の違い
扉を選ぶ際はデザインだけでなく、遮断性・気密性・採光性・ドア周辺のスペースなどの機能性も重要です。日常の生活動線を想像して、ドアを開ける方向などさまざまな面を考慮して選ぶようにしましょう。
扉① 片開き戸
片開き戸は最も一般的なタイプの扉です。扉の片側に丁番やヒンジを設置して、扉を吊った部分を軸に弧を描くように扉を回転させることで、一枚の扉が前後どちらかに開閉する仕組みです。
片開き戸の特徴
扉が開く側にはある程度のスペースが必要となりますが、引き戸のように、開いたドアをしまう戸袋が不要な為、周りの壁に絵を飾ったりスイッチをつけたり等、扉横の壁面を有効利用することが出来ます。間口が広く取れない場所の扉にも適しています。気密性や防音性に優れているので、セキュリティや防水に配慮が必要な玄関ドアや、遮断性を高めたい寝室や客間などの室内ドアに多く選ばれます。
扉全体に凹凸の柄が入っているタイプや、スリット状にガラスが入っているタイプのデザイン等、種類が豊富です。扉にガラスを付けることは、光を取り入れることが出来るのはもちろん、出会い頭の衝突を避ける配慮も可能となります。最近では広めのバスルームの入口に、全面ガラスの片開き戸を取り付ける、高級感あるデザインを施された扉も見られます。
「片開き戸」特徴のまとめ
- 前後に開閉スペースが必要
- 戸袋が必要ないので、壁を有効利用出来る
- 気密性や防音性が高い
選び方のポイント
片開き戸は、引き戸のように床にレールが必要ないため、フラットで段差のない床の仕上げとすることが出来ます。掃除がしやすく、バリアフリーにも配慮出来る扉となります。ただし、扉の可動する範囲が広くなりますので、高齢者や身体が不自由な方は使いにくいかもしれません。
また、片開き戸は開けたままにしておくと、風の影響で扉が勢いよく閉まってしまうこともあります。大きな音の発生や手を挟んでしまう危険性を考えると、扉を開け放して使いたい場合には、開いた状態で扉が固定される、ドアストッパーをつけることをおすすめします。
一方、空調効率を考えて、扉が中途半端に開いた状態を維持しない様に、ドアクローザーを取り付ける手法もあります。もしくはキッチンの収納スペースなど、頻繁に手早く開け閉めする片開き戸には、扉をゆっくりと閉めることの出来るソフトクローズを設置すると良いです。
このようなものは、後から扉に取り付けることが出来る場合も多く、今お住まいのお家でお困りの際には後付けタイプのストッパーやクローザーを使用してみると良いと思います。
「片開き戸」選び方のポイントまとめ
- レールがないため清掃が容易
- 開け放して使いたい場合や、開け放しを防ぎたい扉にはドアストッパーやドアクローザーの設置がおすすめ
扉② 親子戸・両開き戸の特徴と選び方のポイント
最近の玄関ドアで多く使われるのが親子戸です。扉を開閉する動作は片開き戸と同じですが、人が出入りする際に使うドア(親)と荷物を出し入れする際等に、間口を広く開放するための予備扉(子)の2枚を組み合わせた扉です。同じようなタイプに、2枚同じ大きさの片開き戸を合せた扉を両開き戸と呼びます。こちらは人の通る扉としては、海外のように広い邸宅や、体育館や倉庫などの公共の場で見ることがありますが、スペースの限られた日本の住宅で使われることはあまり多くありません。しかし、下足入やクローゼットなど、収納用の扉としては多く使用されています。
親子戸・両開き戸の特徴
最近は、大型の海外製の家具を取り扱うインテリアショップが年々増えています。一般的に利用される家具の中でも、ダブルベッドや食器棚、ピアノなどは、通常の片開き戸で搬入することが容易ではありません。将来に備えて幅の広いタイプの玄関扉としておくことで、家具の搬入だけでなく、車椅子の幅にも配慮することが出来ます。
「親子戸・両開き戸」特徴のまとめ
- 大型家具の搬入が容易
- 車椅子の幅にも配慮
選び方のポイント
扉の幅が広くなり使い勝手が良くなる分、扉の材料(パネルや金具など)が増えるので、「親子戸」や「両開き戸」は片開き戸よりも価格が高くなります。現在使用している家具のサイズや住宅の間取りを十分に確認した上で、大きな開口を確保できる扉が必要かどうかを判断すると良いです。
一方で、収納用に両開き戸を設置する際には1点注意が必要です。キッチンの吊戸棚の多くはこの両開き戸が使われていますが、人の通る扉と違い、バネだけで開閉するタイプが一般的です。その為、扉を閉めた状態で固定する能力が弱く、地震の際には中のものが飛び出してくることがあります。最近は、「耐震ラッチ」と言って、急な振動に対してロックが掛かる仕組みを持つ小道具がありますので、戸棚が高い位置に設置されている場合には、取り付けることをおすすめします。
片開き戸で解説したように、手挟み防止のソフトクローズの設置を検討するのも良いでしょう。
「親子戸・両開き戸」選び方のポイントまとめ
- 片開き戸よりもコストは上がる
- 子扉の使用頻度は高くないので、必要性を考えて選ぶこと
- 吊戸棚の扉の場合は、地震対策などを考える
扉③ 引き戸・引き違い戸の特徴と選び方のポイント
片開き戸の次に多く使われる扉が、引き戸になります。扉を左右にスライドさせて溝やレールを滑らせて開閉する仕組みです。1枚の扉を壁に重ねるように収納する引き戸と、複数の扉を重ねて収納する引き違い戸があります。引き違い戸では、見た目は扉2枚分ですが、実質的な開口スペースは扉1枚分になります。日本では昔から押入れのふすまや和室の障子として馴染みのあるドアですが、最近はその使い勝手の良さから洋室に合うデザインの引き戸も増えています。
引き戸・引き違い戸の特徴
引き戸は開閉のために前後のスペースが不要なため、デッドスペースが生じないことが大きな特徴です。開閉する為に必要な動作も少なく済むので、住宅のバリアフリー化という観点からも導入が増えています。片開き戸と違い、開けたままにして通気性を確保することは容易ですが、気密性はやや劣ります。2枚引き違い戸だけでなく、間口の広さに合わせて複数の扉を重ねて開閉することも出来ます。例えばリビングに面する洋室の出入口に、3連引き違い戸(扉3枚が並ぶイメージ)を採用すれば、扉を開けたときには、2室一体で利用可能な広い開口を確保することが出来ます。お風呂場や洗面所などの狭いスペースにもよく使われます。
「引き戸・引き違い戸」の特徴のまとめ
- 壁に沿う為、部屋側の開閉のスペースが不要
- バリアフリー化に最適
- 気密性は劣る
- 部屋の換気用に使いやすい
- 扉の組み合わせによって、部屋の間仕切りとしての機能も発揮する
選び方のポイント
引き戸はバリアフリーに適しているとお伝えしましたが、床にレールが出てくるので僅かな段差が生じます。これは車椅子などにとっては少し不利になることも考えられます。また、清掃しづらく、ゴミが詰まると扉がレールから外れてしまうという難点もあります。そのため最近では、使い勝手は同じですが、床のレールを滑らせるのではなく、天井のレールから吊るタイプの、ハンガードアが人気です。
床はフラットになり、より軽い力で扉を動かすことが出来るので、様々な方に適しています。
「引き戸・引き違い戸」の選び方のポイントまとめ
- レールの清掃が難点
- ハンガードアであれば、床がフラットになる
扉④ 引き込み戸の特徴と選び方のポイント
引き込み戸とは、壁の中に扉を収納するスペース(戸袋)が作られているタイプの引き戸です。
引き込み戸の特徴
一見引き違い戸と似ていますが、戸袋の部分の壁が厚く作られているので、扉を完全に壁の中に収納することが出来ます。引き戸や引き違い戸のように、扉を開いた際に収納する壁(もしくはもう一枚の扉)がないため、デッドスペースとなる壁が存在しません。ドアを開けたままでも部屋全体がすっきりと見え、自由に家具のレイアウトをすることが出来ます。複数の戸も壁の中に収納することも出来ますが、その分壁の厚みは必要となります。
「引き込み戸」特徴のまとめ
- デッドスペースとなる壁がない
- 部屋をすっきりと見せることが出来る
選び方のポイント
海外では多く使われるこの引き込み戸ですが、戸袋の中にゴミが溜まってしまうと非常に掃除がしにくいというデメリットがあります。また、扉を完全に壁の中に収納しても、扉を壁から引き易くする為の工夫がされた、様々な引手の形状がありますが、あまり一般的に使い慣れていないと思います。こちらはショールームなどで実際に使い方を見て選ぶ方がよいと思います。
「引き込み戸」選び方のポイントまとめ
- 戸袋の中の清掃は非常に難しい
- 引手は独自の形状もあるので、使い勝手をショールーム等で確認する
扉⑤ 折れ戸の特徴と選び方のポイント
折れ戸とは、蝶番に繋がれた二枚一組の扉を畳むことで開閉するタイプの扉です。上レールに扉を吊る上吊式と、天井や梁に無理な負担が掛からない下荷重式があります。折れ戸が二枚並び、中央から左右に畳むことで開閉する両折れ戸と呼ばれるもの等があります。開き戸のおよそ1/3の開閉スペースで取り付けることができるので、浴室や壁面収納のクローゼットなど、あまり奥行きのないスペースを有効に活用するために使われます。またリビングダイニングのような広い空間を仕切る間仕切りとしてもおすすめです。
折れ戸の特徴
扉を折りたたむことで開くので、狭いスペースで広く開口部を取ることができます。また、1枚1枚の扉が小さくて軽く、ご高齢の方でも扱いやすい扉となります。扉を全体的に開くことが出来るので、クローゼットでは何がどこにしまってあるのかわかりやすく、テラスなどに面して設置すれば外と中をつなげることも出来ます。大きさにもよりますが、引き戸や開き戸に比べて設置コストが低いことは、折り戸ならではのメリットです。
「折れ戸」特徴のまとめ
- 開放性が高く、間仕切りとしての使用も可能
- 狭いスペースに適している
- 1枚1枚の扉が小さくて軽い
- 設置コストが比較的安い
選び方のポイント
開き戸や引き戸と比べて、機構が少し複雑になるため、乱暴に扱うと壊れることもあります。また、扉を閉じる際に隙間に指を挟んでしまう危険もあるので、小さなお子様が使うには不向きかもしれません。レールの部分や折りたたまれた部分は引き戸や引き込み戸と同様にゴミがたまりやすいので、こまめな清掃も必要です。
「折れ戸」選び方のポイントまとめ
- 小さな子供は手挟みに注意が必要
- レール部分はこまめな清掃が必要
扉⑥ フラップドア・フリッパードアの特徴と選び方のポイント
ここまで、住宅で使われる一般的な扉についてはお話ししましたが、ここからは用途によっては大変便利に扱えるフラップドア、フリッパードアと呼ばれる扉についても説明します。
フラップドア・フリッパードアの特徴
フラップドアとは、別名「跳ね上げドア」とも言いますが、一般的にはディスプレイタイプの家具に使われる扉で、その名の通り上部に開いて、跳ね上げるタイプの扉です。フラップドアは開き戸の一種になりますが、あまり高さがないところや、極端に高いところで、通常の開き戸では使いづらい姿勢となってしまうところ等で、上部に引き上げる形の扉を用いて、軽い力で開閉できる収納扉となります。フリッパードアとはフラップドアを横にしたような扉で、どちらも引き込み戸のように開いた扉を棚の上部にしまい込むことが出来るので、オープンな飾り棚として見せることが出来ます。
「フラップドア・フリッパードア」特徴のまとめ
- 家具に設置することが多い
- 軽い力で開閉しやすい
- 扉を隠して飾り棚として見せることが出来る
選び方のポイント
フラップドア、フリッパードアのいずれも特殊な金具を用いて開閉するため、機構が複雑になりその分コストも上がります。また、扉の裏側を清掃することが難しくなります。住宅に設置する扉としては登場頻度の高い扉ではありませんが、部屋をすっきりと見せつつ、無駄なスペースを作らない仕組みとなっているので、例えばキッチンの吊戸や仏壇の収納、洗濯機の目隠しなど、用途によっては大変使い勝手の良い扉となります。
「フラップドア・フリッパードア」選び方のポイントまとめ
- コストが上がる
- 扉の裏側の清掃が難しい
- 用途によっては、非常に便利なタイプの扉
まとめ
毎日の暮らしの中で使う扉は、生活動線や行動様式に大きく影響します。扉が変わることで空間のイメージや使い勝手が変わるので、生活にも大きな影響を与えます。一日の暮らしをイメージした上で、家具の配置やバリアフリーの観点、部屋の広さや見せ方を想像しながら、最適な扉を選んでみてください。