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【建築士つぶやく】「ガラス」建築のデザイン実例 – ディテール、種別、ガラス性能

図面制作スタッフ

下の画像は建物の存在を消し去ってしまうガラス建築です。ディテール、ガラス種別、ガラス性能全て計算し尽くして実現できるデザインです。

 

 

建築雑誌等でもガラス張りの建築物を表現する際に、「透明感のある〜」と言われますが、まさにこれが存在自体が消えてしまう透明感のあるガラス建築です。

なぜここまで透明感があるのか
周りの景色との境となる線も、ガラスだけで区切られ反射性の高いガラス種類が使用されることで、室内の様子は殆ど確認する事が出来ず、外部の風景が映り込み、それがこの建物の存在を消し去ってしまっています。

今回は、ガラスの美しい使い方について、ディテール、ガラス種別、ガラス性能と合わせて考察していきたいと思います。

 

 

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ガラスの種類と使い方

枠なしガラス張り建築

今や断熱性向上の為、複層ガラスが当たり前の時代です。住宅、ビル建築問わず大凡の建築は空気層を挟み込んだ複層ガラスが使用されます。それでも、デザイン上複層ガラスをあえて使用しない場合があります。それは、先の例でもあったように、できる限りガラスだけを全面に見せたい場合です。よく言われる「全面ガラス張り」です。

 

 

そもそも全面ガラス張りですが、一枚もののガラスが建築を覆っているわけではなく、何枚ものガラスが連続して実現できています。

建築資材のガラス
ガラスは現場で製作することは出来ない素材ですので、工場で製作できる最大寸歩(製作最大寸法)があり、ガラスはそれ以上大きく作ることができません。また、ガラス製作工場から現場までの運搬手段や現場での設置可能スペースによってもガラスの最大寸法に制限が出てきます。よって、建物全面を一枚のガラスで覆われた建物は存在せず、分割され、それらが綺麗に合わされ全面ガラス張りが実現しています。

ただし、複層ガラスの場合、ガラスとガラスの間に空気層があります。それは断熱性を向上させる為ですが、空気層内で結露が起きないよう乾燥空気が注入され、ガラス四周は乾燥剤とシーリングで固定されております。その為、ガラス四周にシーリングが見えて来ます。そうなるとガラスの連続性が途切れることになります。非常に小さな寸法ですが、これがあるとないでは全く見え方が変わって来ます。このガラス四周のシーリングを隠すよう一般的にはアルミサッシ枠を取り付けることになります。

意匠的に、アルミサッシ枠を見せずガラスだけでデザインしたい場合は複層ガラスは使用せず単板ガラス又は合わせガラスを使用し、アルミサッシ枠が出てこない工法によりガラス同士を連続させ、全面ガラス張りを実現させます。

断熱性が複層ガラスに比べ劣ることになりますので、その建築によって対処方法は異なって来ますが、空調等の機械的に解決する場合と、ガラス張りの内側に、もう一枚ガラス張り若しくは外装を纏うことをします。どちらにしても、非常に割高となりますが、非常に美しく仕上がります。

 

枠なしガラス張り建築(住宅スケール)

その他にも、ガラスを美しく魅せる方法として、住宅スケールの階高の低い建築の場合は、床から天井まで3m以内程度ですので、一枚もののガラスで計画することが可能です。

 

床、天井内にアルミサッシ枠をうまく隠すことができれば、サッシ枠の存在を消し美しいガラス面を実現することもできます。
 

既製品アルミサッシ枠ガラス建築

最近のアルミサッシ商品の中には、枠をできる限り細く見えるよう工夫された商品があります。やや割高とはなりますが、非常にスッキリしていて美しくなります。

 

 

アルミサッシが一般的ではなかった昔はスチール枠でガラスを支えていました

スチール枠の特徴
スチール枠は現在のアルミサッシ枠に比べ精度が低く、性能(耐震性、水密性、気密性)も悪く、耐久性も低い為、最近では見なくなりましたが、枠形状が非常にシンプルで見た目は美しくなります。

そのシンプルな枠形状がアルミで実現できるようになり、ビル建築ではよく見かけるようになりました。

 

その他ガラス張り建築変わり種3選

フレーム内ガラス貼り建築

構造体である柱・梁をあえて外部に露出させ、フレームを強調させることで、ガラスの継ぎ目が殆ど確認出来ず、フレームの中に大きなガラスBOXがあるように見えます。

 

 

屋上部分の一部はフレームだけで、向こうの空が確認出来、より透明感の感じられるデザインです。

 

ガラスブロック建築

こちらは、 建物をガラスブロックで全面を覆っています。建物内の照明色を統一し都市を照らすランタンのイメージとなっています。

 

 

外装となっているガラスブロックは、地震に耐えるよう、上から吊り下げるようなかたちで支えられています。大きな揺れにはそれぞれのブロックがほんのわずかな幅で揺れ動き、揺れを逃すという仕組みで、美しいだけでなく、建築的な工夫満載の建物です。

 

床(天井面)に使用するガラス

金沢21世紀美術館の有名なスポットですが、こちらは床面にガラスが使用され、そのガラス床面を水盤にしています

 

 

水盤下はガラス天井となっている為、内部に人が入ることができ、見上げると水盤と通して地上部分を見ることが出来ますので、非常に神秘的な空間となっています。

 

まとめ

ガラスは今の建築に必要不可欠な材料です。また、断熱性、遮熱性、遮音性、耐火性、防犯性能等、様々な性能が付加されつつあります。昨今特に、環境配慮や省エネに対する関心が高まり、性能面を優先するあまり、ガラスのデザインが疎かになっている建築が見受けられます。美しさも一つの機能です。ガラスの性能面はネット等にも沢山掲載されていますが、ガラスを美しく見せる方法は、掲載されていません。

今回事例で挙げたような、隅々まで検討し尽くされた美しい建築が増えていくよう、また、美しいガラスの建築の存在を知っていただけるよう、建築の設計をする立場から発信していければと考えています。

 

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ニックネーム
one archi

現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。

自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。

 

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