窓周りや外壁面等、雨水をどこに導くかを決定する水切り。
建物への漏水を防止する役割や、外壁面の汚れを防止する役割等、建築において非常に重要な役割を持つ水切りですが、存在感があまりにも薄く、建築設計者はその存在感をなくし窓周りや外壁面を美しく見せるよう考えることが多いと思われます。水切りは窓周りや外壁周りで必ず必要となってくる建築アイテムですが、どうしても意匠上余分な線となって表れてきます。
この余分な線となって表れてくる水切りをいかに美しく見せるか。消し去る手法とあえて見せる手法、設計者は日々試行錯誤し水を狙ったところへ導くよう計画しています。
今回は、水切りの役割から、水切りの様々な種類を紹介していきたいと思います。
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水切りの役割と種類
雨水は、外壁を垂直に伝い、その後水平面があれば水平面も伝っていきます。その為、水平面から重力方向と逆側へ折り返すことで雨水が切れます。水切りが必要とされる場所ごとに、それらの設置手法が異なってきます。
窓上部の水切り
窓上部に設置する水切りの役割は、窓上部の外壁から伝ってくる雨水が窓へ入ってくるのを防ぎます。
外壁を伝う雨水の量は、屋根面に溜めた量に比べると少なくなりますが、窓上部の外壁の長さが長ければ長いほど多くなります。
それらの雨水が窓面へそのまま伝わりますと、窓面の汚れや室内への漏水に直結しますので、窓上の水切りは必須となってきます。窓上の水切りには、建物の構造によっても設置の仕方は様々です。
構造による水切りの設置の仕方
代表的なものですと、まずはRC造の窓上水切り。RC造の場合、窓を外壁面より室内側へセットバックさせた位置へ設置し、窓上部のRC面へ水切り目地を設けます。最も目立たず、ローコストな方法で、RC造の公共建築物では最も多く採用されている手法だと思われます。鉄骨造では、窓位置が外壁面と同面に設置されることが多いため、窓上に金物で水切りをつけて、窓から上部の外壁を伝って流れてくる雨水が直接窓面へ伝わらないように設置します。木造でも、鉄骨造と同様に窓と外壁が同面に設置されることが多いため、鉄骨造と同様に金物で水切りを設置する例が多いです。
窓下部の水切り
窓下部の水切りの役割は、窓上部の水切りとは少し様子が異なり、主に窓下部の外壁汚れ防止の意味合いが大きくなってきます。
窓は、外壁面より、内側にセットバックされてたり、窓上部に水切りが設定されることにより、埃がたかりやすい構造となっています。外壁面と異なる汚れ方をする窓面に雨水がかかり、そのまま外壁面を伝うと筋状の汚れが残ることになります。外壁面が一様に汚れれば、それほど気にならないですが、筋状に汚れが目立つと気になってきます。外壁面の汚れは、建物劣化状況が一番目立つところですので、水切りの計画一つで、大きく差が出てくることになります。
窓下部の水切り種類については、窓のとりつく位置(外壁との関係性)によって変わってきます。例えば、窓位置が外壁面より飛び出してとりつく出窓型であれば、窓下部の水切りは、比較的シンプルに金物折り曲げの金物で計画できますが、逆に、内側へ入り込んでいる窓については、窓から外壁面までの距離全てを囲うようにして水切りを設置する必要があり、水切りに要する面積が大きくなります。
ただ、これを逆手に取ってデザインする例もあります。一般的には、スチールやアルミ材を曲げ加工して水切りを設置しますが、石を使ってデザインに組み込んだり、鉄の無垢材をそのまま飛び出させてデザインする例があります。コストはやや高くなりますが、見た目がかなり良くなります。
外壁頂部の水切り
外壁の頂部(最も上の部分)の水切りについてですが、最近の建物は軒のないものが多く、特にこの外壁頂部の水切りの重要性が問われることになります。
軒があれば、軒で一旦雨水が切れますので外壁頂部に雨水が侵入することは考えにくいのですが、軒がない場合、外壁頂部から雨水が侵入することが考えられます。できる限り、外壁面を多く水切りが被さりたいところですが、デザイン上はそうはいかない為、水切りの見える面積は極力小さくして、水切りと外壁の隙間はシーリングを施して雨水が外壁内へ侵入することを防止しています。
また、この部分の水切りは、外壁面の雨垂れ汚れ防止の役割もあります、水切り深さが浅く、シーリングだけの計画では、雨垂れ汚れ防止の役割も薄らいできます。ただ、コスト優先で考えると、一般的には、上記のようなシーリングで計画されることが多いのが実情だと思いますが、雨水の侵入を防止して更に美しく見せる方法もあります。
それは、外壁内へ雨が入っても、室内までは入らず、水をうまく導き外側へ抜ける構造にしておき、水切りは内側でしっかり計画しておくと、防水機能と美観が両立します。ややコストが割高となりますが、機能面が守られます。この外壁頂部の水切りは建物の寿命にも大きな影響を及ぼす所となりますので、防水上の機能面が最も重要です。意匠性を付加する場合は、やや割高となりますが、防水上の機能面を確保した上で計画することが重要と考えます。
外壁最下部の水切り
外壁の最下部の水切りについては、外壁を伝ってきた雨水が外壁の内側へ侵入しないようにする役割があります。外壁最下部は一般的には、RCの腰壁と取り合うことが多く、外壁材とRC腰壁の間へ、金物を曲げ加工した水切りを設置します。
この部分は、これより下部の汚れ等はあまり気にする必要ない所で、室内への漏水を防止する意味合いが大きいところになります。水切りがなく、シーリングだけで止水している例も見受けることもありますが、シーリングは永久的なものではないので、シーリングが切れた途端、室内へ雨水が侵入することになります。シーリングの場合も、室外側をシンプルにするのであれば、外壁内に雨水が侵入しても、外部へ排水できる構造となっていれば、防水機能面と美観を両立することが可能となります。
まとめ
水切りは、外壁の汚れ防止や室内への漏水防止の役割を担い、建築を水から守ってくれる重要アイテムとなります。雨水を確実に切り、水をどこへ導くか。その水の導き方で建物のデザインやコスト、更には寿命にも影響してくることになります。確実な水切りの計画をした上で、建物を長期に渡り美しく保たれるよう水の導き方を考えた設計をしていきたいと思います。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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