【建築士つぶやく】個性的な「道の駅」のデザイン事例集

全国に約1200ある道の駅、それぞれ地域の特徴を表したコンセプトで建てられていますが、立地する場所については、郊外の自然に恵まれたところが多く、平屋若しくは2階建ての建物が多くなります。それぞれ建物のコンセプトは違いますが、立地条件や機能面により建物のデザインが似通ってきます。

その中でも、周辺環境や地域の特徴を建築的なしくみを使って個性を出している道の駅がいくつかあります。共通して言えることは、郊外での立地条件からおおらかなデザインで、建物用途的に要求される、地域の賑わい創出と、情報提供機能面より、オープンなデザインがしっくりくることです。

それらのおおらかでオープンなデザインを美しく創造している建築をいくつか紹介していきたいと思います。

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道の駅ソレーネ

平屋の小さないくつかの箱を、一枚の大屋根で覆ったデザインです。小さな箱と箱の間も大屋根の下で、外と内のあいまいな空間を作り、渡り廊下になる時もあれば、休憩スペースとなる時もあり、余白（余裕）のあるデザインです。

またその大屋根は完全に建物を覆うわけではなく、光や風、視線を向こうの自然へ向けて抜けていくよう計画され、屋根の端部は地面まで連続する形状となっています。大屋根のスケールは非常に大きくなりますが、オープンで、山の稜線に合うような地面から緩やかに立ち上がった様子は、圧迫感がなく軽快感があり、地域をやさしく包むおおらかなデザインで美しく感じます。

道の駅ならぶ土佐佐賀

先ほどの大屋根とは対照的に、小さく分節された屋根が連続する形状ですが、屋根の頂部（棟）と軒先に水平材を通し、分節された小さな屋根端部はシャープな形状で同サイズ、同ピッチで連続させることで、デザインが分節されず一体的なものに認識されるおおらかなデザインです。

また、このシャープに分節された屋根は、地域の特徴であるカツオのヒレのような力強さを感じさせてくれます。屋根を連続的に分節することで、おおらかなデザインの中にも、分節された間からは外部の光を取り入れることもできます。夜間は逆に、内部の明かりを行燈のようにやさしく地域に照らすことにもつながり、街に開けたデザインです。

道の駅おおゆ

シンプルに組み上げた大屋根を、地域の伝統工芸である「曲げわっぱ」にヒント得たリング状のLVL（単層積層材）を構造体として使用しています。変な小細工は一切せず、とにかくシンプルに建築構造材を表した美しいデザインです。

街に向けた壁面はすべて開けて、それとは逆の壁面はすべて閉じる。閉じた面に換気・・空調等の必要な機能を集約させ、シンプルな空間の妨げとならない配慮が施されています。照明についても、出来る限り目立たないよう線を細く抑えたレール式を採用し、大屋根の連続感の妨げにならない配慮がなされています。それらの建築構造・設備の技術的高度な解決により、非常にシンプルかつ美しい空間が実現しています。

道の駅ましこ

こちらの屋根は、屋根が複雑にずれながら重なる形状を採用しています。このずれながら重なる様子は、地域の山々の稜線を表現しています。このスケール感が絶妙で、もしこの建物が一枚の大屋根で構成されると、周辺地域との住宅スケールから逸脱しそうです。また、逆にさらに分節された屋根とすると、おおらかさが欠ける。周辺環境とのスケール感と建物用途的に必要とされる地域の象徴的なスケール感をうまく表現した形状です。建物内部は、地域の土をつかった左官壁が採用されており、建物外観から内部の空間まで地域によりそったやさしい建築です。

まとめ

美しい道の駅デザインに共通するのは、様々な機能が介在するプランの中で、シンプルな大屋根でそれらを包括し、かつ地域に開いたデザインになっていることではないかと考えてまいます。大屋根のデザインは、それぞれその道の駅で解釈は異なり、一枚ものとなる場合もあれば、分節されている場合もありますが、建築的な工夫によりシンプルな大屋根で周辺環境に溶け込むようなデザインとなっています。