吹抜けは、明るく開放的で魅力的な空間を演出してくれます。公共施設であれば、共用スペースのロビーや待合スペース等での建物の導入部に組み入れることで、建物の構造を瞬時に把握でき視認性の向上にも繋がります。魅力的で、メリットも沢山ある吹抜け空間ですが、温熱環境等技術的解決により成立させ、コスト的に不利な所もあります。
今回はそんな吹抜け空間のメリット、デメリットについて解説していきたいと思います。
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吹抜けのメリット
・光を奥まで届けてくれる
・天井面が高くなるので、開放的な空間となる
・空間の視認性が高まる
光を奥まで届けてくれる
吹き抜けは、高い位置から光を入れることが出来ますので、プラン上暗くなりがちな平面の奥側まで光を届けることが出来ます。建物中央部分の奥まった位置へトップライトにより、真上から光を入れることも可能ですが、真上から直接の太陽光は強すぎることもあり、吹抜けを返して光を奥まで届ける方が、柔らかく光を奥まで届けることが可能となります。
天井面が高くなるので、開放的な空間となる
吹抜けは上階の床面を抜くことで、天井面が高くなり、空間の容積が倍増することで、一機に開放感が増すことになります。単純に天井高さを上げると、建物自体の階高や、上階への影響がありますが、層が重なる建物で、上階の床を抜くことで、容易に空間の容積を大きくすることが可能となります。
空間の視認性が高まる
吹き抜けに面して、各諸室が配置されることで、吹抜け空間より、感覚的にその空間が認識されやすくなります。例えば、役所等の公共建築物の場合、入口へ入って、館内の全体案内をみて、行きたい窓口へいくかと思いますが、中央に大きな吹抜けがあり、それに面して、各諸室が配置されていると、吹抜けから直接見ることが出来ます。また、直接見なくても、吹抜けを中心とした間取りであれば、館内間取り図も認識しやすくなります。
吹抜けのデメリット
・温熱環境
・メンテナンス性
・プランの制限
・坪単価の増加
温熱環境
吹抜け部は、暖房時の暖気が上部で溜まってしまい床面まで温まりにくい構造となります。建物の断熱性や気密性を出来る限り高め、熱損失を少なくすることが必要となります。さらに、空気を循環させる設備を導入し、出来る限り高低差による温度差を少なくしますが、吹抜け無しに比べると明らかに温熱環境が不利となります。
メンテナンス性
吹抜けを作ると天井面が高くなります。その天井面に設置される照明や空調、消防設備等についてメンテナンス性が悪くなります。照明や空調等が故障した場合は、足場を組み、一時的にその空間は立ち入りが出来なくなります。吹抜けでなければ、一般的な脚立により管理人等で対応が可能ですが、足場が必要となると業者によるメンテナンスが必要となります。また、吹抜けに面した窓の清掃についても、メンテナンス通路がなければ清掃業者への依頼が必要となります。
プランの制限
吹抜け部は、上階の光環境の良好な場所をある一定の面積が取られることになります。吹抜けがなければ、その部分に他の諸室が配置できることになりますので、上階の平面計画に制限がかかることになります。
坪単価の増加
吹抜け部は、構造上上階の床を抜いた形となり、建築の床面積には含まれませんが、建物の容積は、吹抜けの有無にかかわらず同じだけ必要となるため、坪単価に換算すると高くなります。
例えば、1階100坪、2階100坪の、総2階の合計200坪、2億円の建物があったとします。単純に、総2階の200坪であれば、2億円÷200=坪単価100万円となります。同じ建物で、2階部分が全て吹抜けとなっている場合は、2億円÷100=坪単価200万円となります。外から見れば、同じ建物のように見えますが、吹抜けの有無で大きく坪単価が高くなります。
また、吹抜けを作ることで、温熱環境改善の為の断熱性・気密性の向上対策や、空気循環の設備導入費が更に割高となる要因ともなります。また、建物の規模が大きくなりますと、法的にも規制がかかってきます。火災時に、吹抜けを介して上階へ火が燃え移らないように区画する必要がでてきます。そうなりますと、物理的に防火シャッター等を計画することになりますので、更にコストが割高となってきます。
まとめ
吹抜けは、明るく開放感があり空間を魅力的なものとしてくれますが、温熱環境やコスト的なデメリットもあり、そのデメリットを建築的な工夫により解決していく必要があります。意外と簡単に出来るものではなく、技術的な計算の積み重ねによって、魅力的な吹抜け空間が出来ています。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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