ヒトの利用する施設や住宅には、なくてはならない存在のベンチや椅子。
意外と設計の終盤で考えられることが多くあります。建築にベンチはなくてはならない存在ですが、空間に合わせて如何様にも合わすことも可能な存在でもあるため、設計では空間を造ったあとで考えられることが多いのかもしれません。どんな空間にも柔軟に対応出来るベンチですが、ヒトが誘導して配置されるベンチもあれば、ヒトが自然と座ることでベンチに変わるものもある不思議な存在でもあります。
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座る行為を誘導するベンチや椅子
空間に一つベンチや椅子を置くことで、その方向にヒトを座らせることを誘導することが出来ます。住宅では、リビングやダイニングに座った時にヒトの目線でどのようにその空間が見えるかを操作しながらベンチや椅子の配置などを検討します。例えば、自然の借景が美しいロケーションであれば、その方向に開口部を設け、美しい借景だけを切り取りますが、その切り取り方はベンチに座った時のヒトの目線レベルと方向によって決められます。
この場合のベンチや椅子の配置は、かなり精度高く方向や高さを誘導して決められます。
一方で、もっと大きな規模の施設や屋外の公園などのベンチは、そんな精度高く方向や高さを決めて置かれているのでしょうか。もちろん、そのようなヒトの視線を考慮したベンチの配置をされている大規模施設や公園もあると思いますが、大きな空間に適当に配置されたベンチや椅子が多いと思われます。それでも、その適当に置かれたベンチの方向によってヒトはその方向に座らされることになり、強制的にその方向を向くことになります。
空間の規模が小さい住宅であれば、その小さな空間にいかに大きな宇宙を感じられるかを工夫し、座った時のヒトの目線もmm単位で狙っていきますが、規模が大きくなればなるほど、考え方も大らかになり、住宅ほどシビアに狙わないのかもしれません。
自然とベンチ
設計者が狙って配置されるベンチもあれば、ヒトが勝手に座ることでベンチになることもあります。
例えば、階段やちょっとした段差は、設計者の意図に関係なくベンチになる場合があります。ベンチや椅子の座面高さは、凡そ40cm前後が一般的で最も自然に座ることが出来る高さでもあります。階段やちょっとした段差は10cmから20cm程度ですので、一般的なベンチに比べると非常に低い高さになります。長時間座るには適していないかもしれませんが、ヒトは10cmでも段差があれば、足元の床面と切り離された座面と認識できているのかもしれません。
ベンチの設計順序の重要性
ヒトが誘導して造られるベンチもあれば、設計者の意図しない自然とベンチになる空間もありますが、ベンチはヒトが一休みしたり、美しい景色を見たりと非常に重要な役割を担っていることは間違いありません。
なのに、ベンチの設計はだいたい終盤。住宅などの規模の小さい建築では、ベンチの位置と高さと方向が決まれば、開口部の切り取り方は、凡そ検討できるため、ベンチの形状や素材などは後で決めることが多くなります。ベンチの形状や素材を決める順番はそんな重要ではなく、空間に馴染むか否かが重要で、空間を造り込んで行く中で、徐々に導き出されるものなのかもしれません。どちらが先に決めるのかはそれ程重要ではないのかもしれません。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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