この記事では住宅の換気システムについて第1種~第3種まですべて解説します。
私たちが生きていくうえで酸素はなくてはならないものですよね。一方で、吐き出した二酸化炭素が蓄積してしまうと人体に悪影響があります。また、二酸化炭素濃度だけでなく、家具や住宅から発せられるあらゆる物質は、換気が不十分な環境では人体に害を及ぼす可能性があります。
そこで、人体を守り快適な住空間をつくる「換気システム」について、その種別と仕組みについて分かりやすく解説します。
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住宅の換気が不足した際の症状
換気が不足すると下記のような症状が発生します。
人が呼吸するだけで吐き出される二酸化炭素。気密性の高い部屋では自然とその濃度が高まり、息苦しさや頭痛を引き起こす原因となります。また、ガスや石油ストーブなど開放形の暖房器具は、一酸化炭素中毒を招く危険があります。
建材や多くの家庭用品から発生するホルムアルデヒドやVOC(揮発性有機化合物)などの化学物質は毒性が強く、発がん性もあり、アレルギーの原因になります。人に与える影響は個人差があり、敏感に反応してしまう人も多く、その症状は、目がチカチカする・鼻水・のどの乾燥・吐き気・頭痛・湿疹など人によりさまざま。
外部から持ち込まれたチリや人間の体から落ちた垢、それを餌に繁殖したダニなど、室内のチリ(塵)の総称がハウスダストです。呼吸や汗による皮膚への付着により、アトピー性皮膚炎、鼻炎、気管支喘息といったアレルギー疾患を引き起こす主因となります。
現在の住宅はこうした事態にならないよう、換気システムによって常に新鮮な空気を取り入れるように設計されています。
住宅の換気に関する法的な規制
現在は住宅の換気に法的規制が存在します。2003年7月1日以降建築基準法が改正され、すべての建築物に「24時間換気システムの設置」が義務付けられました。
これは住宅の気密性が高まったことにより、建材が発するホルムアルデヒドが「シックハウス症候群」を引き起こす事例が相次いだからという経緯があります。ちなみに法改正によって明確な基準が打ち出されましたが、現在でも「シックハウス症候群」は起こりえます。原因究明が難しい症状なので自衛のためにも換気についての知識は身に付けておきたいですね。そこで、ここからは換気システムの具体的な種別・仕組みについて解説しましょう。
換気システムの種類
換気システムは、機械で給排気する第一種、機械給気・自然排気の第二種、自然給気・機械排気の第三種があり、用途に応じて使い分けます。
第一種換気方式 | 第二種換気方式 | 第三種換気方式 | |
---|---|---|---|
給気 | 機械給気 | 機械給気 | 自然給気 |
排気 | 機械排気 | 自然排気 | 機械排気 |
メリット | ・効率よく換気できる ・熱交換器で空調負荷軽減 |
・チリやほこり等の汚染防止 | ・コスト低い ・結露発生しにくい |
デメリット | ・コスト高い ・メンテナンス手間 |
・気密性低いと結露リスク増 ・換気が不十分になる可能性 |
・気密性低いと空調負荷増 |
住宅おすすめ度 | △ | × | ○ |
第一種換気方式
第一種換気方式とは「給気」「排気」とも機械で換気する方式です。つまり、自然ではなく強制的に「給気」「排気」を行う方式です。
「第一種換気方式」のメリット
3種類の換気方式の中でもっとも効率よく換気できるシステムです。給気も換気も機械で行うため室内の気圧を調整でき、バランスよく換気が可能となります。また第一種換気システムは通常、熱交換器も設置します。これにより、内外部の気温差が大きいときに換気で失う熱量を少なくして空調負荷を軽減します。熱交換器は三菱電機の「ロスナイ」などが有名ですね。
「第一種換気方式」のデメリット
デメリットは「給気」「排気」どちらも機械で行うためコストが高いことです。ダクトや熱交換器といった設備の初期費用や更新費用がかかりますし、換気扇を多数稼動させるので消費電力が増加してランニングコストもかかります。また、換気設備にフィルターを設置するためフィルター清掃の手間や、ダクト内の清掃は専門業者にお願いするといった保守のコストもかかります。
第二種換気方式
第二種換気方式とは機械で「給気」、自然「排気」する換気方式です。「給気」を機械で強制的に行い室内の圧力をプラス圧(正圧)に保つことで、自然に「排気」する仕組みです。住宅ではほとんど使われておらず、クリーンルームなどゴミやほこりが入ってこないように圧力を保つ必要がある施設に採用されます。
「第二種換気方式」のメリット
メリットは常に新鮮な空気を取り入れることです。また、外部からの埃やゴミなどを入ってこないように清潔に保つことができます。この特性を活かし、病院の無菌室や工場のクリーンルームなどに採用されています。
「第二種換気方式」のデメリット
「第二種換気方式」のデメリットは気密性が低い場合に起こりえます。気密性の低い住宅の場合、室内の湿度や汚れた空気が屋根裏や壁の中に入り込み、湿気を含んだ空気が急激に冷やされて壁内結露を起こす可能性が非常に高くなります。壁内結露は住宅を内側からカビ・腐食させ、住宅寿命を縮める原因となります。また、給気ファン近くに窓がある場合は、取り込んだばかりの新鮮な空気が窓からすぐに排気されてしまう、いわゆる「ショートサーキット」が発生する可能性があるので注意が必要です。
第三種換気方式
第三種換気方式とは「給気」を自然に行い、排気ファンにより「排気」する換気方式です。排気ファンで強制的に排気することで、自然に新鮮な空気を取り入れることができます。
「第三種換気方式」のメリット
「第三種換気方式」のメリットは低コストかつメンテナンスが楽なことです。機械式の第一種換気よりイニシャルコストやランニングコストをはるかに抑えることができますし、フィルター交換や清掃などのメンテナンス手間も軽減されます。また、一般的な住宅で最も広く採用されている換気方式でもあります。多くの場合はトイレや浴室、洗面所等の局所排気と併用されています。自然給気と強制排気の仕組みは、小屋裏や壁内に湿った空気が入りにくく内部結露が発生しにくいメリットもあります。あなたのご家庭も「第三種換気方式」を導入しているのではないでしょうか。
「第三種換気方式」のデメリット
住宅の気密性が低い場合に、給気口や隙間から外気が入り込んで空調負荷がかかることがデメリットです。特に夏場は熱気、冬場は換気が入ってくると室内で温度差が生じることがあります。これが原因でエアコンや暖房器具を余計に稼働させる必要が出てしまいます。
まとめ
「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」それぞれ一長一短はありますが、住宅ではやはり第三種換気システムに軍配があがるようです。お金があったら第一種換気を使いたいものですが・・・。ちなみに住宅ではなく企業の事務所などでは「第一種換気方式」が採用されることが多いようです。
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