建築家が好んで使うコンクリート打放し。何か分からないですが惹かれるものを感じます。
コンクリート打放しで思い浮かぶ代表的な建築家は安藤忠雄さんですが、代表作である住吉の長屋(1976年竣工)を作った時、お金がなかったから打放しで作るしかなかったと言っています。今やコンクリート打放しの住宅は高級住宅となっていますが、当時は断熱や打放し仕上げ補修等もなしでいいと割り切っていましたので、本当にコンクリート打設のみで仕上がっています。そうなればローコストなコンクリート打放しが可能です。
ただし、現在では省エネや環境配慮が世間一般に広まっていますので、断熱なしの外装は考えられません。内外共の打放しをしたいとなれば、外壁側へ打放しのコンクリート打設し、断熱を挟み込んで、内側にも同じようにコンクリート打放しの壁を建てることになります。
また、コンクリート打設は現場で仕上げるもので、一品生産ものです。現場の状況によっては、ピンホール(コンクリート打設時に、空気が残ってしまい、小さな沢山の穴ができてしまうこと)やジャンカ(コンクリートが型枠内に、うまく流れ込まず十分に充填できていない状態)、コールドジョイント(コンクリート打設に時間がかかってしまい、先に打ったコンクリートと後に打ったコンクリートが一体化せず、継ぎ目が見えてきてしまう現象)がよく発生します。
それらは、見た目が欠陥っぽく見えてしまう為、補修を行います。吹き付け仕上げや塗装仕上げであれば、それらの欠陥は簡単に隠してしまうことが可能ですが、コンクリート打放しの場合は、均一な表情でないので、現場のコンクリート表情に合わせて補修し、化粧していきます。これは専門の左官職人が行いますが、これもなかなか思い通りにはいきません。何度もやり直すことが多くあります。世の中には、コンクリート打放しが沢山ありますが、綺麗に仕上げるのが非常に難しく、コストも手間も人一倍かかります。
そんな手間がかかり、同じものが出来ないもので、意図せず出来た表情が何かわからないけど惹きつけられるコンクリートの魅力なのかもしれません。
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美しいコンクリート打放しの種類
コンクリート打放しにも、いくつか種類があります。
一般的によく見かけるのが、上のイメージのようなパネルの目地があり、穴がいくつかあいた打放し。これは、1800mm×900mmの型枠を450mmピッチ程度のセパレーターと言われる型枠の固定材を使って固定したところへコンクリートを流し込み、型枠を外しセパレーターを外すと、それらの形跡を残してコンクリート打放しが仕上がります。
このパネルを縦使いにするのか、横使いにするのかでイメージも変わってきます。また、セパレーターの位置によってもイメージが変わってきます。その計画する建物に合わせ、パネル割、セパレーター割を検討しデザインしていきます。一般的には、型枠は打放し型枠と言われる合板で、板に樹脂を塗って表面をツルツルさせたものです。仕上がりは、ツルツルした仕上がりで、比較的上品な打放しになります。その型枠をあえて、合板のままとする仕上げもあります。合板の表情が転写され、荒々しい表情となります。
また、杉板を小幅(幅100等)で型枠をする場合もあり、こちらについても杉板の表情が転写されます。杉板の表情が転写されることで、より一層、人が意図して作るものから遠ざかり、魅力が増すような気がします。
この杉板型枠も使い方を変えるだけでいろんな表情を作ることができます。杉板をランダムに乱張りしたり、幅を変えたり、厚みを変えたり、かなりのバリエーションが考えられます。
あと、これはかなり手間がかかるのですが、コンクリート打放しを一旦作った上で、ハンマーで叩いて凸凹に仕上げる「小叩き仕上げ」があります。
こちらの仕上げは、あらかじめコンクリートの厚みを余分に計画しておき、所定の厚み分をハンマーで削って行くことになりますので、設計から施工までかなりの技術力が必要となります。また、手間が尋常じゃないほどかかりますので、もちろん予算に跳ね返ってきます。
これは好みの問題もあるかもしれませんが、出来上がった当初はいいかと思いますが、経年した時の汚れが非常に気になります。また、内部に使う場合は埃がたかりそうで気になります。よほど、この仕上げが必要とならない限り設計者は使うことはないと思います。
まとめ
コンクリート打放しは工業製品のようなものとは違い、現場でつくりあげるその場だけの仕上げです。現場での技術者や、現場の水や砂利によっても表情が変わってきます。また、コンクリート打放の技術は設計から施工まで綿密に計画してなせるもので、非常に難易度の高い仕上げです。更に、仕上りは均一な表情ではなく、意図した通りに出来ない。それがコンクリート打放しの魅了される要因の一つでないかと考えます。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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