壁と床の境目となるところに取り付く建築部材「巾木(はばき)」。部材も小さく、普段はほとんど気にならないところだと思います。
そんな巾木ですが、少し変えるだけでインテリアの雰囲気をも変え得る建築アイテムで、小さい寸法で大きな影響を与えます。設計者の中でも意外と気にされていないところでもありますが、材質や高さ寸法、凸型や凹型、色を変えたり、照明を組み込んだりと意匠上の手法は様々で、インテリアに合わせた計画をすることにより、その空間をより美しく上品に演出してくれます。
今回は巾木のあれこれについて解説していきたいと思います。
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巾木の役割
そもそも「巾木の役割とは」ですが、大きく2つあります。
壁と床は違う材が取り付くことになります。その為、施工上、数mm程度、壁と床は少し隙間が出来て仕上がります。ピッタリ違う材を重ねることが難しいことと、材質によっては温度や湿度による部材の伸縮があり、それらの伸縮を考慮にいれて数mm隙間をあけて仕上げます。壁材と床材の隙間を隠すために巾木を取り付けます。
壁面下部は、いろんなものがぶつかり得る場所です。掃除の時に、掃除機等が壁面下部にぶつかります。また、扉付近では、人の足がぶつかることもあります。そんないろんなものがぶつかり得る場所を補強する意味合いと、汚れが目立ちにくくする意味合いがあります。
こうした役割が必要なため、一般的には木製で高さ60mm~100mmの頑丈で汚れの目立ちにくい材が選ばれます。
木製巾木と白い壁面に取り付けますと、インテリアが普通の洋室っぽくなります。そこで、巾木の色を壁面と合わせて白くする等の工夫が施されますが、白くすると汚れが目立ちやすくなるので止めておきましょうと言う意見もあります。
はたして、本当に汚れが目立つことになるのかですが、一昔前であれば、雑巾がけをしたり、掃除機もかなり大きなもので、吸引力もそれほどなかったりしましたので、隅々まで掃除しようとガンガンぶつけて掃除をしていたと思います。
それでは、やはり壁面の下部は汚れてしまうことになりますが、現在は、そんなガンガン掃除機を振り回さなくとも、吸引力が強くなることで、ある程度きれいに掃除できます。また、掃除型ロボットが優しく掃除してくれる家庭も増えてきているのではないでしょうか。
汚れに関しては、それほど気にしなくてもよくなって来ていると思われます。
透し目巾木
壁面と床面の隙間は施工上、数mm隙間が空きます、それを隠すために巾木を設置しますが、その隙間をあえて大きく15㎜程度とすることで、隙間が巾木代わりとなります。
その隙間は壁面ボードの端部の切れ端が見えて来ますので、それを綺麗に見せるように、小さな部材(見切り材やアングル等)で隠すようにします。
その隙間寸法を15mmとするのか、もしくはもう少し大きく20mmとするのかでも雰囲気は異なって来ます。この寸法は、天井高さ(壁面の高さ)によっても変わって来ますので、その計画に合わせて寸法を調整していきます。
照明を組み込む
巾木に照明を組み込むことで、夜間のフットライトがわりにも使用できます。照明も普段は巾木の中に隠れていますので、インテリアもかなりスッキリします。
最近の照明機器はLEDが主流で、巾木のような小さい部材の中でも簡単に取り付けられるようになりました。
あえて出して見せる
木目の優しい雰囲気を出すために、あえて巾木を出っ張らせる手法もあります。こちらについては、デザイン上の好みもありますが、施工上も容易で、汚れの心配もない一番安全な納まりとなります。
巾木なし
完全に巾木を無くしてしまう手法です。これは、かなり思い切った手法ですが、壁面に何も取り付かせず、壁面をとにかく綺麗に見せる手法です。
壁面と床面の隙間は、床面にすることで、壁面は非常に綺麗に見えますが、床面の隙間は、ほこりやゴミが溜まってしまいます。こまめに掃除する必要があるので、家庭用には向いていないと思われます。
まとめ
建築部材の中では、特に小さい部材で、特に気にされていない方が多いと思われる巾木ですが、実はデザインの巾も広く、それにより、インテリア全体に及ぼす影響も大きい部材の一つです。巾木を見せる、隠す、機能を付加する(照明を組みこむ)等、手法は様々で、見え方が大きく変わってくると共に、掃除の方法も変わってきます。それらを考慮した上、その建築に一番適した巾木のデザインを組み入れていく必要があると考えます。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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