温かみがあり、どこか懐かしさを感じる木製建具ですが、今やアルミサッシや鋼製建具が主流となり、住宅をはじめ公共建築物でも木製建具を見ることは少なくなってきています。工場で大量生産される技術や全国への運搬が困難であった一昔前は、その地で採れる木材を加工して作られるドアや窓が主流で、木材を加工する職人も各地でいたようですが、最近では、そんな職人も少なくなってきているようです。そんな希少価値のある木製建具ですが、現在でもあえて採用する事例も見受けられます。
今回は、木製建具の特徴や、最近での木製建具の事例について解説いたします。
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木製建具の特徴
日本の木製建具は主に杉材や檜材が使われていましたが、最近では米ヒバやピーラ、アッシュなどの外国産のものが主流となっています。
水密性や気密性等の性能面では、圧倒的にアルミサッシや鋼製建具が有利ではありますが、木製建具が今も使われる理由としては、木の意匠性と枠に塗る色を豊富な選択肢から決めること、インテリアに与える意匠性の影響度の大きさがあります。また、アルミサッシとは異なり木には断熱性と調湿性とがあります。日本の室内外の温度差程度であれば、木部での結露は殆どおきることはありません。また、温度差が大きくなり、結露が発生したとしても、表面の結露水を木が吸収するため、表面に結露を生じさせません。断熱性や調湿性の理由より、ヨーロッパ等の寒冷地では木製建具がよく使われています。
法的な所からも木製建具は採用出来ない場合もあります。地域によっては防火地域の指定があり、敷地境界線に近い部分や隣の建物との距離が近い場合は、開口部に防火の措置を施す必要があります。木製建具の弱点は防火性能が低い所で、そのような法的に防火措置が必要な所で使用することが難しい材料となります。(※防火措置を施した木製建具も存在しますが、高価なものとなることと、意匠性に制限がでてきます)
外部に面する玄関扉
玄関に使われる外部に面する木製建具は、大きく分けて開き戸、引き戸の2種類あります。
開き戸は、レバーハンドルを握り押し引きすることで開閉する建具で、出入口の前後に扉の開閉可動域が必要となります。引き戸は、ドアを横にスライドさせることで開閉する建具で開閉域のスペースを要しません。バリアフリーの観点からは、それらの開閉域が少なくて住む引き戸が有利となります。意匠面では、開き戸の場合、扉とそれ以外の外壁面の面を合わせてフラットな面を構成することが可能ですが、引き戸の場合は、引き代(戸袋)部分が必要となり、外壁面とフラットに見せることが難しい機構となっています。
また、玄関扉についても、水密性、気密性、防火性、経済性の観点より、主流はアルミ製や鋼製となっていますが、断熱性、意匠性の観点では木製建具が美しく建物に調和しますので、数は少ないですが、ある一定層の建築家は好んで採用することがあります。
外部に面する窓
外部に面する窓の役割としては、外部の光を室内に取り入れる採光の役割や、換気をするための役割、火災時に室内の煙を外部に排出するための役割、雨風台風等の外部からの室内への浸水を防止する役割、室内から外部の景色を眺める為の役割があります。それら役割の中でも、開閉の要否があり、換気・排煙の役割では開閉させる必要がありますが、採光、止水、眺望の役割では開閉させる必要がありません。
開閉要否により、意匠面が大きく異なってきます。開閉が必要としない窓については、枠はシンプルにガラスをはめ込むだけですので、木製建具であっても、止水性、気密性は劣ることはありません。開閉が必要となれば、開閉機構が複雑となり、金物でつくるアルミサッシが断然に止水性、気密性がよくなります。木製建具でも止水性、気密性の高い開閉窓も可能ですが、コストが大きく膨らむことになります。
意匠面では、木製建具は質感があり、枠の形状や色の自由度が高い為、アルミサッシに比べデザイン性は高くなり、建築家は好んで使います。
まとめ
昨今非常に少なくなってきている木製建具ですが、特徴を十分理解し、適材適所で使うことで、温かみのある意匠性を実現することが出来ます。木材の弱点となる部分には、既製品のアルミを採用し、うまく建築的に見えなくする工夫も可能です。
デザイン性を高めたいが故に、全てを木製建具とする必要はなく、弱点となる部分はそれ以外の建築でカバーし、はめ殺し部分の木製窓が性能的、コスト的に有利に働く部分に採用する等、うまく組み合わせることが、現在のシビアに性能面を問われる建築には向いているのではないかと思います。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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