斜めに伸びる不思議な柱、この建築をひと目見ただけで、従来の枠組みを越えた新鮮な印象を受けるのではないでしょうか。最近、建築においていわゆる“斜め柱”を採用したデザインを目にする機会が増えてきました。今回は、垂直柱と比べたときのメリット・デメリット、そしてランダムに配置された斜め柱が生み出す自然の木々のような空間演出について考えてみたいと思います。
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斜め柱のメリット
斜め柱のメリットについて見てみましょう。デザイン性や耐震性など、さまざまな利点を紹介します。
1. ダイナミックな印象と個性的な美しさ
まず何よりも目を引くのが、建築全体に与えるダイナミックな印象です。一般的な垂直柱では得られない、斜め特有の動きや緊張感が空間を演出します。たとえば、アトリウムやホールのような大空間で斜め柱を取り入れると、まるで空間全体が躍動しているかのような活気ある雰囲気をつくることができます。
2. 水平力に対する安定性向上の可能性
意外かもしれませんが、設計次第では横方向の力(地震・風など)に対して有効に作用する場合があります。複雑な形状の建物や、高さのある構造の場合、支え方を工夫することで耐震性能に寄与することも。わざと斜めに組むラーメン構造やトラス状の柱は、構造的な剛性を高めることが期待できます。
3. 視線の誘導・空間の仕切りとしての活用
斜め柱は、室内外問わず、人の視線を誘導するのにも効果的です。柱が垂直ではなく斜めになることで、自然と人の目がその先に向かいます。これにより、空間内での動線を意図的にコントロールしつつ、柱そのものが区画の目印にもなるなど、内装計画との相乗効果が期待できます。
斜め柱のデメリット
斜め柱のデメリットについて見てみましょう。構造の複雑さや施工の難しさなど、注意点を紹介します。
1. 施工コストと工程管理の難しさ
もちろんメリットだけではありません。斜めに柱を配置するには、より高度な施工技術が必要となり、従来の垂直柱に比べてコストが上昇する傾向があります。正確な角度設定や鉄骨・コンクリートの加工、取り付けには、細心の注意と豊富な経験が求められます。工程が複雑化しやすく管理コストも増大するため、予算・工期を十分に考慮する必要があります。
2. 空間の有効活用に影響が出る
空間のプランニングでは、斜め柱が邪魔になったり、家具の配置が制限されたりする場面もあります。壁の立ち上がりから斜めに伸びる柱は、スペースを無駄にしてしまったり、通路計画を一段と複雑にしたりするリスクがあります。構造体の魅力を活かしつつ、どのように空間をまとめるかが設計者の腕の見せどころです。
ランダムに配置された斜め柱がもたらす「自然の木々」のような空間
注目すべきは、斜め柱を“ランダム”に配置することで生まれる、自然の森のような雰囲気。木々が風になびきながらそれぞれが自立する森で、木の幹がまっすぐに伸びているものばかりではありません。実際に見渡すと、何本かは傾きながら隣の木と絡み合い、葉と葉が重なり合う光景があります。そんな自然の有機的な印象を、建築意匠へ応用しようというアプローチです。
木立(こだち)のような連続感
ランダムに斜めに立つ柱がずらりと並ぶことで、まるで林の中を歩いているような体験を与えます。柱の角度や太さを少しずつ変化させることで、空間にリズムが生まれ、訪れる人にワクワク感をもたらすでしょう。
光と影の変化による演出
斜め柱が多方向に伸びると、光が当たる部分や影になる部分が複雑に変化します。特に大きなガラス面を用いた場合、太陽光の角度によって空間の表情が刻々と変わるため、自然要素の移ろいを室内に取り込む効果が一段と高まります。
自然との調和やサステナビリティへのアピール
近年の建築では「自然との調和」や「持続可能性(SDGs)」に注目が集まっています。斜め柱をランダムに配置するデザインは、木々のような視覚効果を被覆材や植栽と組み合わせることで、「持続可能で、自然を大切にする建築」であることを示す象徴的な表現にもなり得ます。
まとめ
斜め柱の建築は、その強いインパクトと魅力ゆえに、多くの人の心を掴むデザイン手法の一つです。ダイナミックな美しさや耐震性への寄与、視線誘導などのメリットがある一方で、施工コストや空間計画の難しさといったデメリットも見逃せません。また、柱をランダムに配置することで生まれる自然の木立のような空間の演出は、建築に遊び心と豊かな物語性をもたらしてくれます。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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