のこぎりの歯のカタチを模した屋根、「のこぎり屋根」。昔から工場建築でよく使われる形式の屋根として、日本ではある種ひとつの風景やアイコンとして使われる場面も見ることもあります。のこぎり屋根には、採光面などのメリットがありますが防水面でのデメリットもあります。のこぎり屋根のメリット、デメリットの整理、工場以外の用途へのデザインの拡張性について解説します。
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のこぎり屋根の歴史
のこぎり屋根は1820年代よりイギリスで使われ始めたとされています。日本では、1880年代にイギリスから帰ってきた日本の技術者が広めました。のこぎり屋根の歴史としては200年以上続くもので、沢山の実績ある屋根形状です。日本では、大空間の工場建築を中心にのこぎり屋根が採用されてきましたが、大空間内部への採光や換気に有効であることから、工場以外の用途にも採用されることになります。
のこぎり屋根の建築的なメリットとデメリット
のこぎり屋根のメリットは、以下の3つです。
- 奥行きの深い大空間へ自然採光が確保できる
- 天井面での排気が確保でき、効率的な換気ができる
- 大空間の自然排煙が容易に確保できる
工場等の用途では、特に奥行きの深いプランとなることから大空間内部の採光は人工的な照明に頼らざるをえないところですが、のこぎり屋根にすることで自然採光を大空間内部まで届けることができます。また、のこぎり屋根の形状は北向きに開口が設けられることが多くあります。これはトップライトのようなコントラストの強い光を入れるのではなく、北側の柔らかい安定した光を取り込むことを目的としています。のこぎり形状の北側に開けられた開口は、ハイサイドライトの形状で換気・排煙にも非常に有効な形状となっています。
のこぎり屋根のデメリットは、以下の2つです。
- 漏水の危険性が高まる
- コストが高くなる
のこぎり屋根形状とすることで、防水上の欠点となる谷樋部分が連続することになります。谷樋が連続することで、谷樋をオーバーフローするような大雨がきた場合、漏水の危険性が高まることになります。また、屋根形状が複雑となり、開口部も多くなることから、部材点数が多くなり結果コストが高くなることに繋がります。
のこぎり屋根のデザインの拡張
のこぎり屋根の自然採光などのメリットを活かし、工場以外の用途にデザインを拡張している例があります。
体育施設での例
工場と同じように、大空間が必要となる体育施設にのこぎり屋根が採用される場合があります。体育施設の場合、光が差し込む方角に注意する必要がありますが、自然採光・換気を大空間に導く点ではのこぎり屋根のデザインは有効に働きます。
ホールでの例
人が沢山あつまるホールのような用途でも、のこぎり屋根の形状は非常に有効に働きます。ホールは、体育施設のように光の方角を気にする必要はないため、自然の空を室内に居ながら感じられるように計画されています。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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