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【建築士つぶやく】「雨水」を見せる方法 – 樋の工夫と美しい流し方の実例

図面制作スタッフ

突然ですが下の建物美しいですよね〜。日本的な雰囲気もあり重厚で時代にも流されない強さもあります。とにかくかっこいい!美しい!

 

浅草文化観光センター

浅草文化観光センター

 

ただ、一般的な建築物には当たり前のように付いている物が見当たりませんよね?そうです!樋が見当たらないです。一般的には、屋根先には軒樋が付き、軒樋で屋根面の雨水を受け、竪樋で垂直に流して屋根面の雨水が建物軒下に垂れ流されないように計画されるものですが、その樋が見当たりません。東京の観光地に立地するこの建物の下は歩道ですので、垂れ流す訳にはいきません。
 
ですが、樋が見当たらない。樋がないので、軒先はシャープで建物のガラスやルーバーの透明感が損なわれない為、非常に美しいですよね。美しい建築は、そんな細かな所も気を抜かずデザインされています。樋は建築にとって雨水を建物外部の狙ったところへ導く為の重要なパイプとして平安時代から存在していたとされています。平安時代では雨水を上水として利用するために、集水する役割だったものが、現在では公共下水道や河川に導くように計画されます。どちらにしても、集水し排水する役割で建築には必要不可欠な部材の一つであります。その樋をいかにデザインするかで建築物の印象が大きく変わってきます。

浅草文化観光センターの例では、樋を隠す手法でデザインされていますが、その他にも美しい雨水処理方法を見たことがありますので紹介したいと思います。

 

 

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雨水処理の方法

雨水処理の方法としては、大きくは以下の3つの方法があると思います。(もっとあるかもしれませんが、私の経験上)

雨水処理の3つの方法
① 樋の存在を消してしまう方法
樋自体をデザインする方法
雨水を見せる方法

① 樋の存在を消してしまう方法

まずは、「1、樋の存在を消してしまう方法」で先の例でもあった浅草文化観光センターのように樋が無いように見せる方法です。

浅草文化センターでは、軒先より少し控えた所に隠し樋を設け、一旦室内側へ雨水を導きます。そして、室内で竪に雨水を流し地下で外部へ排水する方法をとっていると思われます。

この内樋の手法については、寒冷地では凍結による樋の破損を防ぐ為に採用されることが多い手法ですが、一般地では建物内側へ雨水を入れ、それら雨水を漏らさずに地下まで導く技術が必要となる為、ハードルが上がります。

逆に言うと、雨を室内に取り入れても漏らさないよう検討に検討を重ねた技術の結晶がこの美しいと感じさせる建物を作り上げるのです。この内樋手法以外にも、樋の存在を消してしまう方法は色々あります。例えば、外壁の一部を雨水が導かれる形状に工夫する方法です。

 

掘り込み樋

 

こうすることで、樋の存在を消すことができます。また、この手法では、室内に雨水を導きませんので、技術面(漏らさない技術)でのハードルは、先程の内樋手法に比べてやや低く安全性は高いと考えられます。

 

② 樋自体をデザインする方法

次に、「樋自体をデザインする方法」についてです。最近では、樋メーカーが建築家と共同でデザインし美しい樋を開発しています。

バンドレス樋

 

日本の高度成長時代から現代まで、建築の樋は施工性とコスト重視の観点から、鋼管(SGP)や塩ビ管(VP)が普及し一般的になりました。それらの樋は、薄肉である為1m以内毎に掴み金物で外壁や構造躯体へ緊結する必要があり、どうしても見た目がごちゃごちゃします。

そこで、樋メーカーはその掴み金物が見えにくい納まりになる商品を開発し樋が垂直の直線だけに見えるよう工夫した商品を取り揃えています。設計者としては、この商品を使えば比較的スッキリするので楽です(笑

一方で、既製品を使わず、樋自体を美しくデザインする手法もあります。

 

パレスサイドビル

 

1枚目写真のパレスサイドビルは、鋼管樋を一旦切り離し、雨水を解放し大皿で受け止める離れ業をしています。かなり独創的なディテールですが、建物全体でデザインされており、非常に美しいです。完成して既に50年以上経っていますが、未だに飽きられる事なく美しいまま現存しています。

 

コープ共済プラザ

 

2枚目の写真はコープ共済プラザです。こちらは、樋の代わりに鎖に雨水を這わせ、さらにその鎖樋を緑化と融合するデザインで雨水を緑化に使った非常に効率的で美しいデザインになっています。

 

③ 雨水を見せる方法

最後に、「3、雨水を見せる方法」です。これは建築業界では最も有名処なフランクロイドライトの落水荘があります。

 

落水荘

 

日本にもこのような雨水を見せる手法をとっている建物は沢山あります。

 

アクロス

 

この建物では屋根を屋上緑化し、建物屋上に降る雨を溜め緑化部分に散水し、溜池から滝状に流す部分も計画して、室内や屋上緑化散策路からその滝を見ることが出来ます。

一見、建物のデザインではなくランドスケープデザインに感じられますが、実際には屋上の雨水の導き方によるデザインです。そんな建物の存在すら消してしまうようなデザイン手法です。

ふじ幼稚園

 

また、こちらの事例では保育園の園庭で、雨水をあえて見せるデザインとなっていて、子供たちが雨の日も雨水を見て楽しめるデザインになっています。このように、雨水処理の方法は様々で、建築のデザインが大きく左右されることが多く設計者はいつも悩んでいます。

また、建築にとって、雨漏れの原因を作るわけにはいかないので、デザイン重視では考えられないところであり、検討に検討を重ねその建築に最も相応し雨水処理方法を見定め、長い年月にも耐え得るデザインとなることを目指して設計しています。

雨水を美しく流している建物を見ると、それらの過程を想像し、不審者のように建物を見てしまいます。美しい建物が新しく出来た時は、そんな不審者が沢山訪れていますので、不審者の数でプロ向けのデザインになっているかがわかるかもしれませんし、皆さまも美しい建築の周りにいる不審者の目線を追いかけて見てみるのも面白いかもしれません。

 

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ニックネーム
one archi

現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。

自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。

 

 

 
 
 
 

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