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【建築士つぶやく】心惹かれる「階段」のデザイン実例

図面制作スタッフ

 

こんな階段心惹かれます。庁舎の入口入ってすぐに見える階段ですが、吹き抜けの空間を彩るように、木の優しい雰囲気と、黒鉄の堅牢で重厚感溢れるデザインで、建物用途もうまく表現した美しい階段です。テレビや雑誌などでも、リビング内階段や、シンボリックな階段で空間を彩っている場面、よく見かけますよね。ニュース番組のスタジオセットでも、上階に行く必要がないのに階段をつけデザインされています。

 

 

階段は一つのデザイン要素として取り扱われる場面がよくあります。建築の構造部は、建物を支え雨風を防ぎ地震や台風から人を守るために、柱や梁、壁や床や屋根があります。それら構造部の中で、唯一の「上下移動のため」に作られるのが階段で、その他の構造部と少し考え方が異なります。建築の構造部の中でも特殊感があり、複雑に様々な要素で出来上がるのも階段で、設計をする立場からは特に考えさせられる構造部の一つです。

そんな階段ですが、どのような要素でデザインされ、どんな階段が人に魅力を感じさせるのかを事例も交えて紹介していきたいと思います。

 

 

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心惹かれる階段のデザイン

法令的要素について

階段にかかる法令関係については、建築基準法、バリアフリー法があります。

建築基準法では、建物用途や規模によって階段の幅、踏面、蹴上の寸法、踊り場の要否等が定められています。それら定められた寸法によって、階段のプロポーションが決まってきます。また、建物用途によってはバリアフリー法が適用され、階段の踏面の材種や手すり高さ等も定められ、その規制の中でのデザインとなります。

階段をデザインする上でも重要となってくる手すりについても、建築基準法により高さの寸法の規定があり、その定められた寸法を如何にデザインに組み入れていくかがキモとなってきます。

例えば、手摺の法的要素の中でのデザインを挙げますと、

建築基準法で定められている手摺を必要とする範囲は、「階段及びその踊り場」とあります。ただし、高さ1m以内は手すりが不要となる緩和規定があります。この緩和規定を使って、最初の上がり始め数段に変化をつけ、手摺なしのデザインとすることで人を迎え入れるイメージをつけ手摺がないので非常にスッキリしたデザインとなります。

 

 

構造力学的要素について

階段は上階から下階への斜めに架け渡される構造部で人の移動時の荷重が掛かることになりますので、スッキリさせたいからと安易に薄い部材には出来ない構造となっています。

また、手摺についても不特定多数が利用する階段では、手摺にかかる水平荷重も考慮する必要があり、支柱が太くなって来ます。スッキリ軽く見せたい場合は力のかかる方向に対して厚みを持たせ、力のかからない方向へは極力薄くする等の工夫が必要となります。

 

 

フラットバーを使った事例で、力のかかる方向に向け縦桟デザインとし、笠木に木材を使用することで、構造体力上強固な構造ですが、スッキリと暖かみも感じれる階段デザインが実現されています。

 

使い勝手による要素について

使い勝手による階段デザインを決定つける要素として、まずは建物用途によって大きく考え方が変わってきます。不特定多数が利用する庁舎や商業施設では、誰にでも安全でユニバーサルデザインを取り入れた階段が望まれますので、手摺はパネル状、若しくは縦格子のような小さなお子様が落下しないデザインが必須となってきます。

また、小さなお子様からご老人の方まで楽に上がれるよう緩やかな勾配にする必要があるため、階段の平面的スペースがより多く必要となってきます。

 

 

住宅のような特定の少数利用の場合は、その特定の人が利用出来れば良いので、最低限の手摺で、最低限のスペースでの計画が可能となります。

 

 

このような階段かっこいいですが、不特定多数が利用する施設では危なすぎますよね。

 

人を魅了する階段デザイン事例紹介

ここからは、人を魅了する階段を事例を交えて紹介していきたいと思います。

 

折り返しの浮遊感あるスッキリした階段

 

住宅の階段ですが、比較的勾配が緩やかで階段に費やすスペースも大きく確保しています。手摺が最低限のピッチで取り付けられており、構造的に段板部分の下にササラプレートを流すことで、段板部分が薄く浮いているように見え、かなりスッキリ透明感があるデザインとなっています。

 

建物用途を表現した木材会館の階段

 

建物用途に合わせ、木材が強調されたデザインです。手摺を黒鉄の見付寸法の小さい部材を採用し笠木の木材が浮いているように見えます。また、階段の上がり方向に変化をつけることで、階段での木材の美しさを感じさせる工夫が施されています。

 

ベンチと兼ねた階段

 

階段を上階へ上がるだけの用途に限定せず、階段状ベンチとしても利用できる様に、寸法調整されたデザインです。階段とベンチの2つの用途が美しく融合したデザインで、建物全体の空間にも合わせ、材とディテールが決められ緊張感もあり洗練されたデザインになっています。

 

まとめ

建築をデザインする上で、階段は安全性や使い勝手、デザインまで、さまざまな検討項目があり、それらを総合的にデザインしていく必要があります。設計者としては、建築構造部位の中でも、最上位に力を入れて設計する部位でもあります。階段を見れば、その建築のグレードがわかってしまうぐらい、建築デザインの上で重要な構造物です。

普段何気なく使っている上下移動で欠かせない構造物「階段」ですが、設計者はその階段に非常に時間をかけて考えています。建物用途での法令的要素、構造力学的要素、使い勝手による要素、その階段のデザインが単にカッコいいと思った時、どんな要素の制約の中でデザインされているのかを考えて見ていただくと、更に階段を見る時の面白さが増してくると思います。

 

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ニックネーム
one archi

現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。

自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。

 

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